2008年5月29日木曜日

オーデュボンの祈り  伊坂 幸太郎

実はこのデビュー作はまだ読んでいませんでした。
ただ、伊坂先生作品の中で評判以上にいい作品。

これは時代を作るなあ、といった内容です。
好き嫌いはあるかもですが、会話のテンポといい、展開のリズムといい文句なし。

ただ、寓話的な展開なのでそこで気になる人は気になるかも。

相変わらずいくつモノエピソードが絡み合い、それぞれの登場人物や
シュツエーションがものすごく凝っていて、この一冊で実は10冊くらい
長編が書けるのでは、と思えるほどぎっしりです。

事実、この作品のある登場人物やシュツエーションは他の作品で
さりげなく使われたりします。

この「イマドキの若者の会話」+「ちょい不思議系な状況」をうまく作品を
展開していく手法で、一躍TOP作家の仲間入り。
「伊坂風」という作品がこの後続々と生まれた、と、実感できる作品です。

↓↓↓↓


Amazon.co.jp
既存のミステリーの枠にとらわれない大胆な発想で、読者を魅了する伊坂幸太郎のデビュー作。レイプという過酷な運命を背負う青年の姿を爽やかに描いた『重力ピエロ』や、特殊能力を持つ4人組の強盗団が活躍する『陽気なギャングが地球を回す』など、特異なキャラクターと奇想天外なストーリーを持ち味にしている著者であるが、その才能の原点ともいえるのが本書だ。事件の被害者は、なんと、人語を操るカカシなのである。
コンビニ強盗に失敗した伊藤は、警察に追われる途中で意識を失い、見知らぬ島で目を覚ます。仙台沖に浮かぶその島は150年もの間、外部との交流を持たない孤島だという。そこで人間たちに崇拝されているのは、言葉を話し、未来を予知するというカカシ「優午」だった。しかしある夜、何者かによって優午が「殺害」される。なぜカカシは、自分の死を予測できなかったのか。「オーデュボンの話を聞きなさい」という優午からの最後のメッセージを手掛かりに、伊藤は、その死の真相に迫っていく。

嘘つきの画家、体重300キロのウサギさん、島の規律として殺人を繰り返す男「桜」。不可思議な登場人物たちの住む島は、不条理に満ちた異様な世界だ。一方、そんな虚構に比するように、現実世界のまがまがしい存在感を放つのが、伊藤の行方を執拗に追う警察官、城山である。本書が、荒唐無稽な絵空事に陥らないのは、こうした虚構と現実とが絶妙なバランスを保持し、せめぎあっているからだ。本格ミステリーの仕掛けもふんだんに盛り込みながら、時に、善悪とは何かという命題をも忍ばせる著者の実力は、ミステリーの果てしない可能性を押し開くものである。(中島正敏) --このテキストは、 文庫 版に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)
警察から逃げる途中で気を失った伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来鎖国を続けているその孤島では、喋るカカシが島の預言者として崇められていた。翌日、カカシが死体となって発見される。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止できなかったのか?ミステリーの新時代を告げる前代未聞の怪作。第五回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作。



2008年5月27日火曜日

検察捜査  中嶋 博行

江戸川乱歩賞を信じて借りたけど、期待以上のものはなかった。

主人公の女検察官にあまり気持ちが入らず、のりもいまひとつよくなかった。

よくある権力闘争で、それ以上の深みがなく、本格推理ってほどのものでも、、。
検察官日記、とまでは言わないけど、検察官+裁判官+弁護士 の権力争い
をテーマにしたら、こうなるだろうなーという話でした。
↓↓↓


内容(「BOOK」データベースより)
横浜の閑静な高級住宅街で、大物弁護士・西垣文雄が惨殺された。横浜地検の美人検察官・岩崎紀美子は、捜査を進めるほど、事件の裏に大きな闇を感じる。日弁連と検察庁、警察庁そして県警の確執…。現役弁護士作家が法曹界のタブーを鋭くえぐった、第40回江戸川乱歩賞受賞の傑作リーガル・サスペンス。

著者紹介
1955年、茨城県生まれ。弁護士。早稲田大学法学部卒。横浜弁護士会に所属しながら、''''94年『検察捜査』で第40回江戸川乱歩賞を受賞。以後、弁護士と作家との2足のわらじを履き、現役弁護士ならではのリーガル・サスペンスで高い評価を得ている。著書『違法弁護』ほか。


2008年5月26日月曜日

最後の記憶  綾辻 行人

綾辻作品の王道かと思いきや、個人的にはちょっと変化球のホラー。
少なくとも本格推理ではない。まったく。

オチも「え~」って感じだし、展開も「この先どうなるのかなああ」
と思いきや、なんとなく解決していくし、、。

他の作品のほうが絶対いい、と期待はずれ感はありました。
まあ、綾辻先生のほかの作品のレベルが高いので、そのあたりは
かわいそうな評価かも。


内容(「BOOK」データベースより)
若年性の痴呆症を患い、ほとんどすべての記憶を失いつつある母・千鶴。彼女に残されたのは、幼い頃に経験したという「凄まじい恐怖」の記憶だけだった。バッタの飛ぶ音、突然の白い閃光、血飛沫と悲鳴、惨殺された大勢の子供たち…死に瀕した母を今もなお苦しめる「最後の記憶」の正体とは何なのか?本格ホラーの恐怖と本格ミステリの驚き―両者の妙なる融合を果たした、綾辻行人・七年ぶりの長編小説。

2008年5月25日日曜日

ヴィズ・ゼロ  福田 和代

関西国際空港でのハイジャックを舞台にしたサスペンス。
警察庁のキャリア官僚と警視庁の元機動隊員との友情や
大学時代のエピソードが絡み合い、ハイジャック犯との
攻防戦を描いた作品。

まあ、先は気になったけど、なんとなくやめ時を探していたような
作品でもありました。

オチは途中で分かるけど、共犯者が最後までわからなかった。
続編が出てきそうな終わり方で、それはそれで楽しみでもある。
続編のほうが期待が持てる不思議な話でした。


2008年5月24日土曜日

総会屋勇次  江上 剛

これまた短編のうすうす系。

一人の総会屋を軸に、いろんな事件に巻き込まれる。

ただ、巻き込まれ方が中途半端で、ひとつのジャストアイディアを
無理やり原稿用紙100枚くらいにして、短編にした感じ。

江上ファンなら読めるけど、なーーんも経済やビジネスに興味
がない人はまったく意味がない。
エンタメ要素を入れているけど、エンタメになっていないので注意。

↓↓↓

内容(「BOOK」データベースより)
刑務所から二年ぶりに娑婆に戻った総会屋の木下勇次。だが、彼を待っていたのは、最愛の娘が自殺したという事実だった。娘の死の理由を調べる勇次は、その背後に投資ファンド経営者として暗躍する男の影を見て…。下請けの口を封じ違法建築に走る大手デベロッパー、行員の労災さえ認めない銀行トップなど、醜い企業論理と経済界のアウトローの闘いを五篇収録。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
江上 剛
1954(昭和29)年、兵庫県生れ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。梅田、芝の支店を経て、本部の企画、人事部門に勤務。’97(平成9)年の第一勧銀総会屋事件では、広報部次長として混乱収拾に尽力した。2002年に、築地支店長を務める傍ら『非情銀行』を発表して作家デビュー。’03年3月、第2作『起死回生』の刊行と同時に、みずほ銀行を退行して、以後、執筆に専念している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


2008年5月23日金曜日

失格社員  江上 剛

短編なのでサクサク読めるけど、記憶に残らない作品。

新聞のコラムを読む程度に、あるいは投稿欄に期待する程度に
読み進めればいいかも。
↓↓

2008年5月22日木曜日

NR  (ノーリターン) 川島 誠

図書館で、さくっと目に付いて、なんとなく借りてしまった本。

本好きならなんとか読めるが、そうでない人は途中でやめるかも。
よくある「展開だけで引っ張る系」で、深みも、なぞときもありゃしない。

会話のリズムとモチーフがよければいいのか、という感じ。

まあ、逆に言えばリズムはいいので、トコトコ読めるし、モチーフは
変わっているので、漫画的に読める。

深みがいらない、暇つぶしていい、という人はどうぞ。
(でもオチはひどいよ~)
↓↓↓

内容(「BOOK」データベースより)
俺、高橋進。らしい。なんでも、日本でも指折の素質を持ったランナー、で、あらゆる科学の天才。だったみたい。でもね、俺、記憶がないの。ぜんぜん。交通事故で両親と自分の記憶を同時になくしちゃったみたいなのよね。病人だっていうのに、変わり者の中国人(マフィア?)が病室におしかけてきて、アレを出せって迫るし、コーチは陸上界の未来を背負って立てとか言うし、バルセロナからきた15歳の叔母さんは妙にかわいいし。で、あげくの果てに救世主?エル・サルバドール…?なんなのよ、それって。あー複雑。もう、いいか、こんなこと。…なんていってもみんな、ほっといてくれないのよねえ。


2008年5月21日水曜日

最終退行 池井戸 潤

これもまた、、ちゅうと半端な。。。
というか、最近経済ものが続いているので飽きているのかも。

よくある「ジャンルジャンキー」
同じジャンルに凝り始めると、もっともっとと、刺激の強い
話を求めてくる病気(私が今作りました)。

まあ、いずれにせよ、自分としては物足りなさが残る。
よくある銀行内部の「下からの反逆系」の話。

銀行に勤めている人や、銀行と縁があった人は読んでみてもいいかも。
↓↓



出版社/著者からの内容紹介
ゼネコンへの巨額債権を放棄する一方、中小企業に対しては貸し剥がしさえも辞さない銀行というエリート組織に、中小企業の経営者を相手にコツコツと働いてきた現場銀行員が、仕事への誇りを賭けて闘いを挑む。
 「負け組」と言われる東京第一銀行の副支店長・蓮沼鶏二は、締め付けを図る本部と、不況に苦しむ取引先や現場行員との板挟みに遭っていた。ただでさえ業務多忙のうえ、エリート意識が強く本部の意向を第一に考えて動く支店長とも対立し、毎日のように遅くまで残業、最後に支店を出る「最終退行」の常連でもあった。バブル期の経営責任もとらず、公的資金に頼りながら、なおも会長として院政を敷く元頭取、その会長に意趣返しをしようと策謀を巡らすリストラに遭った行員との攻防。銀行ぐるみの不正の匂いをかぎつけた副支店長は、ついに反旗を翻す。
 攻守ところを変えるスリリングなドラマから現代サラリーマン社会の構造的欠陥を浮き彫りにする。

2008年5月19日月曜日

タックス・シェルター 幸田 真音

幸田作品はほぼ読んでいるけど、ちょっと飽きてきた感じ。

一番お得意の金融市場系の話なんだけど、生臭い話ばかりで
経済系のニオイが薄い。

最後もどーでもいいオチで、読後感もそれなり。
サスペンスにするならするで、もっと深く切り込んで欲しいし、
男女モノにするならやり取りの妙や心理描写などもっと欲しいし
タックスの裏情報なら、めったにしらない新情報が欲しい。。

全てにおいて中途半端
↓↓



本の説明
タックス・シェルター
外資系銀行や証券会社での債券ディーラー業を経て、経済小説家に転身した幸田真音氏。巨大マネーが飛び交う金融業界の舞台裏と、その大波に翻弄される人間たちの生き様を描写し、多くのファンを獲得している。本書は昨年「週刊朝日」誌上で連載された同名の小説に加筆・修正したもの。「タックス・シェルター」とは、税法の網の目をかいくぐって、巨額の財産を保有し増やすための方法のことで、「課税逃れ商品」とも呼ばれる。
中堅証券会社、谷福証券の創業者にして辣腕経営者である谷山福太郎が、突然の病でこの世を去った。家族に100億円にも及ぶ資産を残した谷山だったが、ただ1人、心を許した部下であり、自分を慕ってくれた財務部長の深田道夫にだけは、秘密裏に築いた海外の隠し口座の存在を告げ、管理を託していた。谷山の死後、深田は金融ブローカーの助言などもあって、隠し資産の中から絵画の売却で得られた一部の450万ドルを運用し始める。

一方、深田が好意を寄せる女性、宮野有紀は、国税調査官であった。宮野も深田を1人の男として意識し始めるが、ある偶然から深田による脱税の事実を知ってしまう…。「タックス・シェルター」によって人生の歯車を狂わせていく者たちの心理を巧みに描く。


(日経ビジネス 2006/10/23 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)


2008年5月15日木曜日

ビター・ブラッド 雫井 脩介

内容も面白く、展開も行き付かせぬ感じ。
推理はまあまあ、、。

警察内での裏切りがテーマだけど、それはあんまり深堀してなくて、
よくある警察モノでかつちょっと家族系。
若手刑事ががんばっている小説、って感じ。

↓↓↓


出版社 / 著者からの内容紹介
警視庁の新米刑事・佐原夏輝。初の現場でコンビを組むことになったベテラン刑事は、 少年時代に別離した実の父親だった――。各界から大きな注目を集める著者による、渾身のミステリー。

2008年5月14日水曜日

カレンダーボーイ 小路 幸也

お約束どおりのホロリ系。
タイムトラベルや青春モノが好きなの人には鉄板の面白さ。

サスペンス的な切り口もあり、ちょい謎解きだけど、
ほとんど意味がなく、完全に青春ホロリ系とエンタメ
と思って読んで下さい。
↓↓↓

20世紀と21世紀を行き来するタイムトリップ物語。
1968年の時代には同級生の安斎と三都は、2006年の時代には同じ大学で働く職場の仲間なのだ。大人になった2人は、家族と昔の同級生を救うためにタイムトラベルをした1968年の小学生の姿で3億円の強奪と同級生の命を救おうとするが…!?

2008年5月13日火曜日

触発 今野 敏

自衛隊と警察のよくあるメンツ争いの中、現場レベルでは
着々と真実に近づいて、いつの間にか一致団結して、真の敵と
戦うことになる。。

という、よくある警察もの。

爆弾処理と犯人(ちょっとだけ仕掛けアリ)との争いは面白かった
けど、全体的に、今野先生作品のファンじゃないと面白さは感じないかも。
↓↓↓

内容(「BOOK」データベースより)
朝のラッシュで混雑する地下鉄駅構内で爆弾テロが発生、死傷者三百名を超える大惨事となった。その威信にかけ、捜査を開始する警視庁。そんな中、政府上層部から一人の男が捜査本部に送り込まれてきた。岸辺和也陸上自衛隊三等陸曹―自衛隊随一の爆弾処理のスペシャリストだ。特殊な過去を持つ彼の前に、第二の犯行予告が届く!はたして犯人の目的は、一体何なのか。

2008年5月12日月曜日

黒と白の殺意 水原 秀策

囲碁業界の話だけど、ルールを知らない人でも楽しめる
内容。
ただ、推理小説と思って読んだら、失敗するかも。
推理時代の奥深さはなく、どちらかというと、囲碁の世界の
面白さや、その中での勝負の世界が面白い。
↓↓↓


内容(「BOOK」データベースより)
椎名弓彦は「殺し屋」の異名を持つ、天才的なプロ囲碁棋士。ある日弓彦は、対局で訪れたホテルで、日本囲碁協会・大村理事の死体を発見する。股間と胸を刺されて絶命している彼のそばには彼の小学生の息子、啓太が呆然と立ち尽くしていた。容疑者は弓彦の弟、直人。IT関連の会社に勤めており、日本囲碁協会とビジネス上のつきあいがあった直人は、彼にリベートの増額を要求されたことが動機ではないかと疑われていた。その矢先、直人は大村の自宅に不法侵入した罪で拘留されてしまう。弟の無実を信じる弓彦は、直人の会社のやり手女性経営者・桐山千穂の協力を得て調査を開始する。日本囲碁協会の不正を暴こうとする二人は、思いもよらない事実を次々と発見し…。


2008年5月11日日曜日

花水木―東京湾臨海署安積班  今野 敏

鉄板系の短編警察小説。

今野先生の作品の中でも比較的落ち着いていて、すっきり
読める作品。
ただ、、深み闇系や、ドスンとくる読み応えを期待しているなら
迷わず「 果断―隠蔽捜査2 」を読みましょう。


2008年5月9日金曜日

ホルモー六景  万城目 学

鴨川ホルモーを読んでいないと、面白さは1/3くらい。
この本を読む直前に読んでいたほうがいいかも、ってくらい。

というか、2部作とおもって、連続で読んで下さい。

この本自体は短編なので、ある一定の質が保たれた作品だけど
今までの万城目作品(といっても2作か)と比べるとちと落ちる。

それぞれ恋愛がテーマで、鴨川ホルモーで出てきた人たちが
主役でガンバっているけど、そろそろアンパイな作品作りに
なっているような気がして少し残念。
↓↓↓